大判例

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仙台高等裁判所 昭和28年(う)112号 判決

検察官の控訴趣意について……の各供述記載を綜合すれば、本件会津大川筋農業水利改良工事は昭和四年に企画され、関係水利組合たる本郷堰・岩崎堰及び堰の三組合が連合会を結成して工事完遂に努力したが……爾来十数年を閲したが目的を達しなかつた難事業で……福島県当局は……工事進行を決意し、新たに共和土木株式会社をして請負わしめて昭和二十四年五月の灌漑期までに通水を実現せしめることとなつた事実、これがため共和土木株式会社においては冬寒中毎日二百人以上の人夫を使役し、昼夜四交替の突貫工事を敢行することとなり、前記三堰連合会に対し人夫供給を要求してきたので、同連合会においては……右請負会社の要求につき協議したところ……寧ろ会社に本職の人夫を傭つて貰い、その代り多年嘱望の通水工事を予定通り灌漑期までに是非とも完成させる必要上、右人夫の飯米を協力米として灌漑農家の保有米から反別割で出し合うことにしては如何ということになり……部落民と協議し、その賛同を得て本件協力米を醵出した経緯である事実……共和土木株式会社は右協力米に対し一升百円の割で代償を出していてそれは当時の闇値段に省略相当するが、超過供出の価格より安いもので、而も灌漑農民としては宿望の工事を灌漑期までに完成させるため協力米として寄附した積りであり、共和土木株式会社としては無償で協力して貰うのは心苦しいとしてこれに対する謝礼として出した積りである事実が認められる。これによつてみれば本件協力米の醵出は長年水不足に悩んだ関係灌漑農民が、多年渇望してきた水利工事を灌漑期までに是非とも完成させて増産したい念願から何等かの形で突貫工事に積極的に協力すべきであると考えて、人夫として就労する代りに人夫に給する飯米を協力米として醵出したもので、その米の代償を得るのが目的でなかつたことは極めて明白であるから、所論のように飯米に窮していた灌漑農民が営利会社たる共和土木に協力米として寄附したと認めるに足る特別の事情がないとは速断し難いのであつて、偶々会社側から灌漑農民に対し闇値段相当の現金を交付した一事のみを促えて直ちに所論のように、生産者は米の対価として現金を受領し、相手方は米の対価として現金を交付したもの、即ち米の売買とみるのでなければ社会通念上経験則に反するものとは遽かに断じ難い。却つて前記食糧管理法関係法規の精神に鉱みれば、被告人が前記会社の業務に関し灌漑農民からその生産の保有米を譲り受けた事実は認められるけれども、これを買い受けたものではないと認めるのが相当である。されば被告人の所為は、食糧管理法施行令第六条にいわゆる政府以外の者が米麦等の生産者からこの生産した米麦等を買い受けた場合に当らないものというべきである。従つて被告人の所為は罪とならないものであり、被告人に対し犯罪の証明がないとして無罪の言渡をした原判決は結局正当である。

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